水冷と空冷

冬の寒さに弱くなり、冬の間はずっとダウンコートを着て過ごしている。
まああったかくてよいのだが、坂を上ったり走ったりすると暑くなって、風を入れるために前を開けたりする。
その時にいつもアタマに浮かぶ言葉がある。
空冷方式」という単語である。

 

私がこの単語に出会ったのは本田技研の創業者・本田宗一郎の伝記の中。

 

本田宗一郎夢を力に―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

本田宗一郎夢を力に―私の履歴書 (日経ビジネス人文庫)

 

 

車やバイクのエンジンが運転中に熱を持ち、冷やさないとオーバーヒートしてしまうらしく、それを防ぐための冷却方法の種類が大きく分けて空冷方式水冷方式というらしい。

名前の通り、
空冷:空気を取り込んでエンジンを冷やす方式
水冷:エンジンの周りに水空間を設け、そこに水や冷却液を流し入れることでエンジンを冷やす
というもの。
空冷の方が簡易で頑丈、水冷の方が冷却効率が良くエンジン音が静か、というメリデメがあるそうです。

 

本田技研の若手技術者たちが水冷方式への転換を要求する中、創業者の本田宗一郎空冷方式を押し通し、若手技術者たちも「おやっさんがそう言うなら…」と押し切られる形で時代遅れの空冷自動車を設計し、結果的に経営に大ダメージを与えてしまう。

 

本田宗一郎とともに本田技研を創業した藤沢武夫は社内のそのような状況を見て、このままでは若い技術者たちが力を発揮できない、潮時だと感じ、まだまだ現役続行を望む本田宗一郎おやっさん、オレもやめるから一緒にやめよう」と説得し、半ば引きずりおろす形で共に引退したのである。

 

本田宗一郎がチョットかわいそうな気もするが、会社のために、そして本田宗一郎本人のために、一緒に引退するという決意をした藤沢武夫は偉いと思うし、本田宗一郎は傍らに藤沢武夫のような人がいて幸せだったと思う。
そのおかげで本田技研は巨大企業に成長したわけだから。

 


というようなことをダウンコートの前を開けるたびに考えるのである。