とかげのたからもの

バンドが趣味の育児中会社員です。音楽鑑賞とジョジョとレミゼラブルが好きです。

映画「パパが遺した物語」の話

またラッセルクロウ絡みで映画を観てしまった…でもこれもほんといい映画だった。賛否両論みたいだけど!

 

パパが遺した物語(字幕版)

 

【警告】ここから先は(ネタバレを含むので未見の人は)読んではいけない

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主人公はアマンダセイフライド演じるケイティという女の子。父親の運転ミスによる事故で母親を亡くし、父親もその事故の後遺症に苦しみ、最終的に発作による事故で死んでしまう。

母親とのシーンは無くて、大人になったケイティはあんまり母親のこと覚えてない、という感じ。でも子どもの頃のケイティは亡くなった母親を恋しがっていたから、愛情ある母親だったと思われる。

 

この映画の他の人の感想をいくつか見てみたのだが、「両親からあれだけ愛情を受けて育ったらあんなトラウマにはならんだろ」みたいな意見がけっこうあったのだが、逆なんだよねぇきっと。愛情を感じてたけどその相手がある日突然いなくなるという経験を2回も(母の時と父の時)したから、愛情を受けること自体、それを失う時のことを考えてしまって怖くなっちゃってるんだと思った。

それでセックス依存症になるのかどうかとかはちょっと分からないけど、映画の描写はすごく自然に思えた。

キャメロンという誠実な男に出会い、キャメロンの愛情を受け、ケイティもキャメロンを愛し始めているのに、キャメロンが自分の両親にケイティを紹介したいと言ってくれたことに怖気づいてしまい、それがきっかけでキャメロンの愛情を失うのが怖くなってしまい、衝動的に他の男と寝てしまい、それがバレて一度はキャメロンと破局。このバレ方もまったくお粗末というか、全然計画的じゃない、衝動的な浮気だったことがよく分かる描写だった。でもキャメロンはもうケイティのことがわかんなくなっちゃって出て行ってしまう。ケイティも自分のことよくわかんないんだもんねぇ…キャメロンもケイティのこと見失うよね。

 

キャメロンが出て行って、ケイティは絵に描いたような自暴自棄に陥りかけるのだが、close to youという父親との思い出の曲がクラブのジュークボックスで偶然かかって我に帰る。

この時のセリフが英語で「I miss you」だったのだが日本語字幕が「パパに会いたい」で、これパパのことかな?キャメロンに会いたいって言ったんじゃないのかな?てちょっと思った。パパのことなのかな?

そしてケイティは誰か(たぶんキャメロン)に電話をかけ、つながったかどうか分からないけど(たぶんつながってない)取るものもとりあえずキャメロンの家に行って、よりをもどしてくれるように説得する。けどキャメロンの家には女がいて、キャメロンは「彼女は友達だ」と言うんだけどケイティはショックを受けて立ち去ってしまう。キャメロンはもうケイティを吹っ切ろうとして他の女の子とやり直そうとほんとに思ってたのかな?それかほんとにただの友達?いやただの友達を家には呼ばないか。別れた日からどのくらい経ってるのか分からないのでなんとも言えんけどわりとドライ?

ケイティのキャメロンへの電話がつながったのかと思って見てて、アポ取って訪ねたのかと思ったら女いたからエッ!ってなった。

そんでこのキャメロンの家から飛び出して家に帰るまでの間に、伯母さんとの会話の回想シーンが入る。この伯母さんもまたひとくせあって、死んだ母親の姉なのだが、死んだ父とは折り合いが悪くて、死んだ母とも微妙だったというような描写があるのだが、ケイティのことをすごく大事にしてて引き取りたいというようなことを父親の生前からずっと言ってて、結局父親が死んでしまってからは実際にケイティを引き取って育ててくれた。と言っても資産家でお手伝いさんがたくさんいて、料理とか家事はお手伝いさんがやっただろうし、本人はちょっとアルコール依存ぽい描写もあって、あんまり良い保護者っぽくはなかった。

なのだが、大人になったケイティと伯母さんの会話はわりと自然で、伯母さんも自分の両親があんまりうまくいってなかったこととか、自分の夫が不倫して離婚したこととかがかなり心に傷になってて、大人になったケイティにそれを打ち明けるというシーンだった。それがどうというわけではないのだが、「人それぞれ悩みはあるし根っからの善人も根っからの悪人もいない」ということなのかなと思った。考えたら伯母さんの両親って、妹であるケイティの母親の両親でもあるわけだしな。ケイティの父親もものすごく良い父親像ではあるけど、母親が死んだ事故の原因となったのは父母の口喧嘩で、その原因は父親の7年前の浮気だったりする。誰が善人とか悪人とかじゃないんだよな。

この会話ががキャメロンの家から自宅に帰るまでの間に回想として挿入されるというのが意味深だなと思った。

そして家に着いたケイティを待っていたのは、タクシーで先回りしたっぽいキャメロン。キャメロンはケイティを許してくれた。ほんと良かったなケイティ。でもキャメロンの心にもケイティの浮気は傷として残っただろうし、今後心の底からケイティを信頼できるかといったら分からないけど、↑の伯母さんのシーンが表すように、人は多面体で、ひとつの出来事だけで全てが決まるわけじゃないよな、と思えた。なんかすごいリアルだなと思ったし、ここで映画が終わるのも良かった。今後はケイティが自分で切り開いて行くしかないんだなって感じた。

 

ケイティはソーシャルワーカーの仕事をしていて、ケイティに少し似た境遇の女の子ルーシーの担当をしている。ルーシーを励ますにあたり、「ピンクの自転車を買いに行きましょう。公園で乗り方を教えてあげる!」と提案するのだが、それは実は父親がしてくれたことそのままなんだよね。愛情ってそういうことなんだなーと思った。自分がされたことを他者にするしかないんだな。

ルーシーの里親が決まり、最後の面談の日にケイティは自分の経験をルーシーに語ってきかせ、「何があっても諦めてはダメ」と告げる。それはなんだか自分に言い聞かせてるみたいな感じがして、ルーシーとケイティの絆も感じられたし、ルーシーが今後楽しく生きていけたらいいなとこちらも思えた。

 

あとは幼いケイティと父親の愛情あふれるシーン。子ども時代と大人になってからのシーンがどんどん切り替わりながら進んでいくのだが混乱することもなく分かりやすかった。

ケイティの子ども時代の子役がものすごかった。泣かされた。ほんと可愛いしうまかった。

ラッセルクロウ演じる父親もとても良かった。娘に対する接し方が自然で、お金が無いなりに精一杯のものを与えてた。事故の後遺症の発作の様子はなんかすごい怖かった。ビューティフルマインドを思い出す感じ。

父親は小説家で、伯母さん夫婦から親権を争う裁判を起こされて、弁護士費用を稼ぐために必死で新作を書くのだがまたそれが痛々しいというか、一個前の作品がヒドイ評価を受けてるのもあり、プレッシャーの中で書きまくってるのだが、構ってほしいケイティは父親に反発し、父親もイライラして2人はケンカしたりしてしまう。そして仲直りした日の夜にまた発作が起きて、苦しんでいる最中に風呂場で倒れて頭を打って、父親はあっけなく死んでしまう。それを朝になってケイティが発見したかと思うとケイティがかわいそうでかわいそうで…。

 

なんかラッセルクロウの映画ってことで見始めたけど途中から完全にラッセルクロウのが「ケイティの父親」としか見えなくなったのが逆に良かったです。

 

幼いケイティと父親がclose to youを一緒に歌うシーンとか、幼いケイティがピンクの自転車に乗れるようになるシーンとか、なんか胸がいっぱいになった。親権争うシーンとかはちょっとしんどかったかな。

 

とりとめがないけどほんとなかなか良い映画だった。