とかげのたからもの

バンドが趣味の育児中会社員です。音楽鑑賞とジョジョとレミゼラブルが好きです。

レミゼラブルの話(ジャベール編その2)

先日もレミゼラブルのジャベールについて語り倒したのだが飽き足らず、また語ります。

特に映画版のジャベールを見て、舞台版や25周年版と比べて思ったこと。

「舞台版」とは、私が観たことのある2013年版帝劇を指します。

 

◆最後のシーン

ジャンバルジャンが天国へ。民衆の歌のメロディでフィナーレが歌われるシーンのジャベールについて。

私は普段25周年版を見てて、25周年版のフィナーレでジャンバルジャンもジャベールもファンティーヌもエポニーヌもアンジョルラスも一緒に晴れやかな顔で歌ってるのが好きで、そこだけ見たりするくらい。今回改めて映画版のフィナーレを見ていたらどこにもラッセルクロウがいなくて、え?ジャベールおらんけど…と動揺した。

調べてみたら、舞台版でもフィナーレはジャベールおらんみたい。もちろんカーテンコールでは出てくるけど、シーンとしてフィナーレにはいないみたい。

帝劇でアンジョルラスでデビューした後にジャベールも演じた上原理生というイケメン俳優がいるのだが、インタビューで「ジャベールはフィナーレに出てこないから、もう民衆の歌を歌うことは無いのだと思うと感慨があった」みたいなことを言っていて、え~そうなん?と思うなどした。

キリスト教の話だから、キリスト教で罪とされるらしい自殺をしたジャベールは天国に行けないから、フィナーレの「天国のバリケード」に行けなかったということ?

そんなひどい…ジャベールあんなに頑張って生きて死んだのに死んでからも救われないのか。

そうなると25周年版はジャベール登場させたの逆にすごい。25周年版も映画版も舞台版もキャメロンマッキントッシュというプロデューサーがついてるから、全然別の解釈ってことじゃないと思うんだけど…25周年版はコンサートという位置づけだからなのかな。

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というわけで映画版の最後はなんか悲しくなってしまった。ジャベール…

 

StarsJavert’s Suicideの演出

Starsは、ジャベールが星たちにジャンバルジャンを含む犯罪者たちを追い続けることを誓うカッコいいシーンで、映画版だとなにか高い塔の上で、なにか大きな鳥の像の前で歌ってて、とてもジャベール感あってカッコいい。 f:id:takki_bear:20200613082507j:image

色味がなくて暗い絵なんだけど、本人の表情は自信に溢れてるそのギャップが良い。

その一方、塔の端のギリギリを歩くシーンが挿入されているところが映画版の良いところ。

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映画版のジャベールはなんというか人間味があるというか、冷酷厳格という面よりも繊細・脆弱な内省的一面が前面に出されてる感じがする。人によっては「映画のジャベールは優しすぎ」と思う人もいるみたい。ジャベールはあくまで冷酷厳格で、それが最後に崩壊してしまうというギャップがないといけないという、それも分かる気がする。舞台版とか25周年版はそうだった。それはそれですごく良い。

けど映画版の内省的な演出も私としてはすごく良くて、内省的だからこそ逆に最後のジャベールの葛藤が胸に迫る気もする。先述の「端を歩く」という演出がそれを後押ししていて、雰囲気としても「ちょっと気まぐれで端を歩いてみた」という感じではなく、迷ったり悔しかったりしたらこの塔に昇って端を歩いて、ギリギリだけど落ちない、落ちないから俺は大丈夫、みたいな願掛けにも見える。

 

この「端を歩く」演出は最後のJavert’s Suicideという、ジャベールが自殺する曲でも出てくる。

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下は河。今はこの後自殺すると分かって見てるけど、映画を初めて映画館で見たときはストーリーを知らずに見ていたので、この人大丈夫かな…なんか不安定な人だと思ってたけどいよいよ精神的ダメージがすごいけど…下は河だし…と思ってだいぶ心配してた。

いざ自殺してしまうと私はガーン!となってしまって、死なんでもええやろ!!!と思うなどした。せっかく自問自答を始めたんだったら今後の人生に活かしなよ!真面目か!と思った。何この感想。

しかも演出として、単に河に飛び込んだだけでなく、河の中のなんか何?水を仕切ってる壁?みたいなとこに腰から激突して、

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しかも河を死体が流れていく様までご丁寧に描かれる。

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映画初見の時、あー!これ絶対に死んだ!と思った。映画の中で、ジャンバルジャンが河に飛び込んで逃げたりするシーンがあったりするので、生半可な演出では私のような初見の人が「もしかしたらジャベール案外生きてるかも?」と思ってしまうかもしれないから、あえて絶対に死んだと思わせる演出にしたんだろうなって思う。結構絶望した。死なんでええやろ!しかもその死に方!と思った。

「敬虔なキリスト教徒が自殺する」というのも、無宗教の私には分からない重みがあるのだろうなと思う。飛び降りる寸前のラッセルクロウの表情も胸に迫るものがあった。

ていうかStarsで歌う寸前、十字架の前で聖書を読んでるシーンが一瞬挟まれてグッとくる。

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制服で十字架で聖書…グッとくる。映画ならではの演出。

25周年版のStarsは、星に見立てたスポットライトがキラキラして綺麗だし、歌っている表情も自信に満ちてて不安定さのかけらもない。

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そして歌もすごくうまい。背も高くてカッコいいし。歌の最後に警棒を空にかざすのだが、それも自信の表れという感じでカッコいい。

25周年版のJavert’s Suicideは、歌っているときの表情が本当に苦しそうというか悔しそうというか、悲しみより怒りを感じる。こんなエネルギーある人が自殺するかな?と思うほどエネルギッシュ。でコンサート形式なので自殺のシーンもあっさりというか、手を挙げるだけで終わるのだがこれはこれで、歌に集中できて良い。

舞台版のStarsはちょっとあんまり覚えてなくて、普通にカッコよかったと思う…。

問題は舞台版のJavert’s suicideで、背景がスクリーンになってたのか、渦みたいな映像があった記憶で、ジャベールの体が吊り上げられて、その渦に呑み込まれる様子を表現していたと思うのだが、ちょっとあんまりわたし的にグッと来なかったというか、いや舞台としてめっちゃ感動はしたのだが、こうやって比較してみるとやはり映画でできることと舞台でできることって違うなと思う。

 

◆ガブローシュの死体にジャベールが自分の勲章を付けるシーン

これは25周年版でも舞台版でも全く無い演出で、映画版のみ。ファンからは賛否両論あるようだが私はグッと来た。普通に考えると「敵ながらあっぱれ」的な感じなのかなと思ったのと、ジャンバルジャンに助けられて価値観がズタズタになっちゃって、夜も眠れなかったろうし、信念が崩れ始めてる感じがした。あと、ジャベールは自分はクズと同類みたいに思ってるとこがあり、エリートっぽい学生たちよりもむしろガブローシュに肩入れしたのかなと思った。なんならアンジョルラスもマリウスも、あんなに世界のこと知ってるぜ!って感じで革命してるのに、地元の所轄で幅を利かせてる警官の顔を知らないっていうのも皮肉だな〜と思った。エリートなんだよなーやっぱり。

あと思ったのは、娼婦になったファンティーヌにやたら厳しいっていうのも、なんか自分の母親が娼婦だかジプシーだかで、自分の出自を否定してるわけだからそういう女にことさらに冷たく当たる部分はあるのかもしれんね。

映画版と25周年版と舞台版で、ガブローシュとジャベールの演出はけっこう差がある印象。

映画版は、まずテナルディエたちと揉めるシーンでジャベールがガブローシュの胸ぐらをつかんで持ち上げて荒々しく放り出す様子が描かれる。

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コノヤローという表情でジャベールをにらむガブローシュ。

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25周年版ではジャベールとガブローシュがここで直接揉めるシーンは無いけど代わりに、Starsをジャベールが歌いあげて意気揚々と去ったあと、ガブローシュが走り出て「なんだあの警部、ここはおいらのシマだぜ」と憎々しげに歌うという演出がある。

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ガブローシュが生き生きしていてとても良い。

そんなこんなでジャベールの顔を覚えていた賢いガブローシュは、学生たちの革命にスパイとして潜入したジャベールを見破って学生たちに伝え、ジャベールは殺されそうになる。

「殺されそうになる」というと「殺されたくない」感じに聞こえるけど、ジャベールも学生なんかに負けないから「殺すなら殺せ」とと啖呵を切るのだが、これは映画版も25周年版も舞台版も、地味だけどすごくジャベールがカッコいいシーン。

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でもその寸前、見破られてきまり悪そうにするところは逆にちょっとジャベールのかわいいシーン。映画版も25周年版もかなり気まずそうな表情するのが良くて、全編通じてジャベールがしどろもどろするのはこのシーンくらいのもので良き良きの良き。

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かわいいといえばもう一つ、上記のテナルディエとのシーンでジャンバルジャンを不用意に逃がしたジャベールにテナルディエがすり寄るところがあるのだが、25周年版と舞台版ではすり寄るテナルディエがコケティッシュでジャベールはあくまで凛々しい感じなのだが、映画版だとちょっと顔をしかめたり眉をひそめたりしてイヤがってるのがちょっとかわいいと思った。

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テナルディエの方も映画ならではというか、自分の汚いハンカチに唾をつけてジャベールの制服の埃を拭いてあげる、みたいな、こっちまでゲーとなる演出でとても良かった。きたねーな!

先述の「端を歩く足を映す」とかガブローシュの演出とかをラッセルクロウが監督に提案したという話を読んだのだが、本当だったらなかなかやるな。私生活崩壊してるらしいのにどうしてこんな演出を思いつくのか謎。

 

◆ゴミを片付けて仕事に戻るところ

ついでにテナルディエのシーンの最後のところ、ジャンバルジャンに逃げられて悔しまぎれに周囲の人たちに「ゴミを片付けろ!仕事に戻れ!」と吐き捨てるように歌ってその場を去る、というシーンがあるのだが、これが映画版と25周年版と舞台版でけっこう雰囲気が違って面白かった。

25周年版だと怒りにまかせてちょっと怒鳴るように歌い、最後も本当の音程だと下がって終わるところをあえて外して怒鳴って終わるので迫力があり、観客からも拍手喝采が起きる。

舞台版だと、最後の部分を音程通り「仕事に戻れ~↓」と下がって終わるから、ちょっと地味というか終わりがはっきりしなくて、拍手するタイミングをつかめなくて、結局拍手が起きないままジャベールが退場しちゃって、え~もったいない。と思った記憶。私が見たときだけなのかな?

映画版だとちょっとおもしろくて、「泳がせておくさ~」みたいなとこまではゆっくりなのだが、「ゴミを片付けろ!仕事に戻れ!」の部分だけすごくテンポが上がって、怒りにまかせて吐き捨てるというより、もうテナルディエたちに興味なくて事務的に言っとく、という雰囲気を感じる。これも映画ならではだな~と思った。舞台だとやはり歌い上げて終わった方が余韻も残るしシビれるけど、映画であればああいうのも全然アリというかむしろ良いって感じがする。

 

◆対決の後半ジャベールのソロになってる

「対決(the confrontation)」という歌があり、ジャベールとジャンバルジャンがお互いの言い分を歌い合う歌があり、たいへんカッコよくて好きなのだが、 これは私の中で謎なのだけど映画版は後半ジャンバルジャンが歌わないのだ。なぜなの?

YouTubeに動画が落ちてたから載せとこう。

25周年版The confrontation

映画版The confrontation

いや別に編曲することが悪いとかは全く思わないのだが、この曲の後半に、2人が同時に「ジャベール!」て言うところが英語でも日本語でもあって、ずっとてんでに自分の言いたいことをバラバラに歌ってるけどここだけ歌詞が合致するというシビれる箇所なのだが、映画版だとここの時点ですでにジャンバルジャンは歌ってないのである。そんな!

でも歌詞的に、最後の方はジャベールの身の上話になってるから、そこを聞かせるためにジャンバルジャンは黙るようにしたのかな?ここの意図を知りたい!

ちなみにこの対決のところもジャベールなかなかいい動きをしていてよき。

最後の方エキサイトしてくるジャベール。

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全編通してこんなにジャベールが白眼をむくシーンは無いです。

 

◆ジャベールの制服遍歴

こんなに変わる?ていうほどジャベールの制服が変わっていってて眼福だった。たしかに時代が10年ずつくらい進んでるからそりゃ変わってもおかしくないね。あとジャベールは地味に昇進してそうだし。

 

まずは牢獄の看守編。

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青い。ここで牢獄の看守をしてるのって、牢獄で生まれて牢獄で育って牢獄に就職したのだろうか…そんなのってねぇ…。価値観歪みそう。

 

次、着任のご挨拶編

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学ランとナポレオン帽子という感じ。ナポレオン帽子ってほんとにかぶってたんやなー。

ここらへんでジャベールが市長をジャンバルジャンと誤解して通報した(ほんとは正解)ことを自ら白状して罰してほしいと申し出るシーンがあり、人にも自分にも厳しいジャベールの人柄がよく分かるシーンなわけだが、

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だいぶんションボリしてる。よほど罪を犯したく無いんだねぇ。自分にも厳しいのは美点ですよ。

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馬で疾走するシーンに「1日の終わりに」がかぶさるのだが、字幕が「正義は素通り」で、シーンには合ってるけど日本語歌詞とはちょと違うな〜と思ったのだが、調べたら日本語歌詞だと「金持ちたちは誰も助けちゃくれぬ」だけど、英語歌詞だと「the righteous hurry pass」だから「正義は素通り」の方が英語歌詞には近いということが今回判明したのであった。調べると出てくるねぇ〜。 

 

次、街のおまわりさん編。
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ナポレオン帽子をなぜかタテかぶり。心境の変化か?

後ろにいる部下っぽい若いのと比べてみると、
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部下は横かぶりしてる。下っ端は横かぶりなのか?謎は深まるばかり。

starsもこの衣装で歌ってた。

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最後、だいぶ出世してきた編。まず戦いの前のワンデイモア。

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なんかずいぶん偉くなった感じ。部下もたくさんおる雰囲気。友達はいなさそうだけど部下はできた様子。

でもなんで部下いるのに、バリケードに潜入するみたいな鉄砲玉みたいな役目をジャベールがやるのか?部下がいても言うこと聞いてもらえないのか、バリケード潜入は仕事じゃなくてプライベートだったのか…。

そしてスパイになって殺されかけた後。
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なんか胸の鎖みたいなやつが外れておる。なんでなんだろうね。
ジャンバルジャンと対峙するシーンはこんな感じ。

相変わらずの上から目線だけどすでに内心敗北を感じているところ

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動いたら撃つ!とわめくも、ピストルを持つ手が震えてしまう
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そしてジャンバルジャンを素通りさせてしまい、敗北感とともにピストルをドブに捨ててしまう
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そして絶望
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あーかわいそう。

ちなみに25周年版や舞台では、このシーンはピストルとか云々は無くて、マリウスを医者に診せる!と言われて「連れて行け!」と通してしまう、ていうシンプルな演出。

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ここも映画ならではと言えるかも。

 

◆まとめ

25周年版や舞台版では感じなかったが、映画版を改めて観て、ジャベールって本当はすごく弱い人だったのかもと思った。

出自を恥じてて親を憎んでて、親みたいになりたくないという想いからなのか敬虔なキリスト教徒になり、看守とか警官とかの「裁く側」として生きてる。

でもそこには自分の意志というか判断はなくて「法」という鎧に守られていたいみたいな気持ちを感じた。ジャンバルジャンと対峙する時も、お前のこういうところが間違ってると俺は思う!とかじゃなく、法が間違ってると言ってるんだから間違ってる!という感じ。

だからこそ最後、ジャンバルジャンの想いに打たれてというか精神的に完敗して、ジャンバルジャンを撃てなくて自らジャンバルジャンを逃がしてしまって自分が「法」に背いてしまった時に、いつも守ってくれていたもの・頼るものを失ってしまって、自分で何も判断できなくなってしまって自我が崩壊してしまったんだろうね。かわいそうなやつやで。

返す返すもフィナーレのシーンにジャベールがいないというのがほんとに不憫で…25周年版はいるからそれを心の支えにします。

 

おわり。