とかげのたからもの

バンドが趣味の育児中会社員です。音楽鑑賞とジョジョとレミゼラブルが好きです。

小林賢太郎の話

ラーメンズ小林賢太郎が過去のコントでホロコーストのことを題材にしていて国際問題になりそうになりオリンピック開会式のショーディレクターを解任された、というショッキングな知らせを聞いた。

聞いて、自分でもびっくりするくらいしょげた。

問題のコントの映像も見た。たしかにダメだった。でもホロコーストを肯定しているわけでは全然ないし、むしろそれを肯定する頭おかしい人、という役柄設定だった。ただ、ホロコーストをお笑いに取り入れること自体がまずかったんだろう。最近「新・映像の世紀」でホロコーストの凄惨な映像を見たばかりだったし、それはすごく分かる。ユダヤ人の組合みたいなところに即知れてしまったとのことで解任はやむなしだし、そのこと自体はもう仕方ない。

今回のことについて、作家の岸田奈美さんがnoteに書いてて納得しかなかったのでリンクを貼っておく。

岸田奈美さんのnote

要約すると、コバケンだけが悪いんじゃない、ファンのうちらにも責任がある、みたいなこと。そうなのかもしれないね。

 

でも今回、自分がラーメンズとかコバケンのことこんなに好きだったんだなぁと再認識した。

思えば中学生の頃、近所のBOM!という謎のレンタルビデオ屋でお笑いのビデオ借りてたらその中にラーメンズが混じってて、その独特の世界観にエッ何これ…となり、BOMにあるビデオを順番に借りて見た。BOMがTSUTAYAになりVHSがDVDになってからも、同じタイトルを二度三度借りて見た。すごく笑えるんだけどなんだか美しいというか感動しちゃうんよね。

記憶が朧げだけどコバケンのソロツアーを友達と観に行った。個人的にはラーメンズのほうが笑えたけど、ついにラーメンズのコバケンの舞台を観たぞ〜という高揚感があった。ラーメンズもいつか観に行きたいと思ってたけどそれは叶わず。

コバケンが椎名林檎のMVに出たり、いろんな形で舞台をやったりしてるのは知ってたけどそんなに追っかけてはおらんかった。そういう意味では全然ファンでは無かったんだな。

なんというか、「私が追っかけてファンをやらなくても自然と天下を取る人」という認識だった。旦那に話して「分からん」と言われた比喩をこれから言うけど、例えばロック音楽が好きだとして、ミッシェルが好き!ピロウズが好き!CD買う!ツアー行く!っていうのはファンで、そのファンの投げ銭でアーティストは生活していくけど、もし「ギター」が好きでギターを弾いている人がいて、ギターを眺めてうっとりしたりギターに添い寝したりはしないよねっていう。弾こうが弾くまいが、弾き手がうまくなろうがなるまいが、ギターは存在としてそこにいて、弾き手を待っているという。なんだこれ。伝わらないか。

 

とにかくコバケンはすげーと思ってて、サブカルとかアングラとかの言葉を知る前からラーメンズはそこにいて、もっとみんなに知ってほしいと思ってた。小林賢太郎と言うと料理研究家と間違われたりしたことあるけど、世間の全ての人とはいかなくても、だいたいの人が名前を知ってるような状態になればいいのにって思ってた。

 

からの今回、オリンピックの開会式という晴れの舞台でコバケンの名前を聞き、コバケンならきっと世界を驚かす面白い演出を考えてくれるだろうし、オリンピックあんまり興味なかったけど絶対開会式は観ようと思ったし、きっと日本中の人が「何あの開会式!すごかった!仕掛けたの誰?小林賢太郎ってなに?」つってYouTubeラーメンズ公式チャンネルのアーカイブを大挙して観に行って、今さらながらラーメンズすごい面白いな、って人が増える、ってなると思った。私も久しぶりにラーメンズの映像観て、やっぱ面白い!つってKぬやMりに勧めてみたりした。っていうかサブカル女子のKぬやMりがラーメンズあんま知らんというのをここで知り衝撃を受けるなどした。別で育児LINEしてたTちやはコバケン好きってことで開会式楽しみだよね〜なんて話をしていた。

 

からのコーネリアスが炎上し楽曲変更、なんかいろいろ思うところあったのだが、個人的には「コバケンの足引っ張るなよな〜」という感想も持った。でもまだ開会式まで4日あったので、コバケンなら4日あればリカバリーできるだろーな。と思ってた。

 

からの、今回の解任劇。上記のTちやのLINEで知って目玉が飛び出たわ。え…開会式前日ですけど…て思った。問題のコントの映像もTwitterで回ってきたから見たけど、こりゃダメだ国際問題になる、でも意図としてホロコーストを肯定したりは全くしてないしむしろその逆だ、でもその主張は通じないだろう、と思った。

 

そしてコバケンのコメント。

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シンプルで潔い良いコメントだなって思ったけど、なんか泣きそうになった。

これでこれまで小林賢太郎ラーメンズを知らなかった人たちには「なんかヤバい芸人上がりの文化人気取り」みたいなレッテルを貼られるだろうし、ラーメンズの動画を観ることもないだろう。元々のファンの中にも離反するひとはいるだろうけど、大部分はそのまま残るとは思うけど…。

何もなければ天下を取る予定だった人がなんでこんなことに…。たしかにあのコントは良くなかった、日本人が思うよりホロコーストアンタッチャブルなものだと思うし、当時からコバケンは謝罪してたらしい。オリンピックに関わらなければこんなことにならなかったのか?

 

コバケンはヤバい人なんかじゃない、作品を観て判断してくれ!って思うけど、私がコーネリアスの音楽をもう聴くことが無いのと同じで、ラーメンズの動画を観て判断する人なんていないだろうなって思う。いたとしても「ヤバい人」のレッテルを貼った状態でお笑いなんて楽しめるわけないから「よくわかんねーな」ってなると思うし。

 

今日の開会式、どうなるんだろ。本当だったら小林賢太郎はどんな開会式を用意していたのか、いつかどんな形でもいいから知りたい。

なんかほんと…悲しい。

 

なんて愚痴をKぬに言ってたら「それはそうといだてんの総集編やってるよ」と教えてもらい、とりあえずテレビをつけたらもう終盤だったのだが名シーンてんこもりで純粋に楽しめて少し元気になった。

いだてんすっごく好きだったけど心ない人からはプロパガンダだって言われたり、ピエール瀧とか徳井とかがやらかしたりしてアレだったけど最後まで観られて良かったなって今は思う。クドカンだって誰かが悪意持って執念深くほじくりかえせばヤバい作品とかもありそうだけど、とりあえず大河は完走できて良かった。

 

今回のコバケンみたいなことがもう起こらないでほしい。過去にやらかしたとしても、何かしら清算して次のチャンスを持てる社会になってほしい。

と言いつつやっぱりコーネリアスのあの記事は不快だし、誰でも何でも謝れば済むってことではないのだけど。。でもコーネリアスだって、爆笑問題の太田が指摘したみたいに、私たちが持ってる情報って20年以上前のあの記事だけで、あれが真実かどうかも分からないし、小山田圭吾が本当は心から後悔していたかもしれないもんな。まあなんとなく他の記事とか見てもそんな感じではないけど…。

 

とりあえず今日の開会式は観ます。