とかげのたからもの

バンドが趣味の育児中会社員です。音楽鑑賞とジョジョとレミゼラブルが好きです。

映画「ビューティフル・マインド」の話

レミゼラブル映画でラッセルクロウが気になるのでラッセルクロウの映画を見た。アマプラに入ってた。

ビューティフル・マインド (字幕版)

 

【これより先は(ネタバレを含むので未見の人は)読んではいけない】

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ビューティフルマインド、名前は知ってたけど見たことなかった。天才数学者の苦悩と成功!みたいな宣伝文句だったので、なんかいろいろ苦労するけどなんかすごい理論とかにたどり着くというヒューマンストーリーだろうな、と思っていたのだがだいぶ違った。

 

映画の主題は数学よりも、統合失調症による本人と家族の苦しみだった。

対ロシアのスパイ活動とかはこちらも見ててなんかおかしいなーというか、これホントかな?と思ってたのでそれが幻覚だったというのは驚かなかったんだが、学生時代からの親友のチャールズも幻覚でそんな人は存在しない、というのがホント驚いたしゾッとした。

というのも、本人がそれらのものが幻覚だと納得できないと治療が進まない、という描写があるのだが、納得するってことは学生時代から深く付き合って心の支えになってた人が最初からいなかったってことを認めないといけないってことだと思うと、それってすごく怖いというか、認めたくないっていうか、じゃあ現実に存在するものはなんなのかって気持ちになっちゃうよねぇ。

ほんとこのチャールズのくだりは、見てるだけの私ですら受け入れ難くて、いやいや、医者のおっさん、それはないやろwwてなった。医者のおっさんは知らないだけで、チャールズとはルームメイトで数学に行き詰まった時に元気付けてくれたり、論文ができたら一緒に喜んでくれたりしたんだよ!みたいな。

でも、よくよく見るとチャールズは結婚式にもいないし、大学時代もジョン(主人公)以外のメンバーとは話したり絡んだりしてないんだよねぇ。大学のシーンで、チャールズはノリが良さそうなのにこういう場には来ないのかな?とかそういえば思った気はするけど、まさか幻覚とは思わなかった。

ちなみに上記の医者のおっさん、サウンドオブミュージックの映画でトランプ大佐を演じてたあの人らしい。お元気そうで何より!

 

今回のジョンの場合、愛する奥さんと子どもだけは実在していたから、そこを支えに立ち直れた。ほんと良かった。

でも注目すべきは奥さんで、ジョンが講師で奥さんが受講生という関係で出会うのだけど、出会う瞬間からほんとパッとしてるというか、オシャレで美人で機転がきいて、素敵なお嬢さんなのです。それでいてちょっと変わったとこもあるから、変わり者のジョンを好きになって結婚するんだけど、ジョンの病気が明らかになっていくところとか、乳飲み子を抱えながらジョンと生活しなきゃいけない苦しさとか、そういうのがうまく表現されていた。

夜の営みにジョンを誘うけどジョンは統合失調症の薬のためにEDになっちゃってその誘いを拒むことになってしまい、それに傷ついた奥さんは落ち着こうとして階下で水を飲むんだけど、たまらなくなってそのグラスを鏡にぶつけて粉々にしちゃって、号泣しちゃうのよねぇ。このシーン泣いた。背景に勝手にレミゼラブルの「夢やぶれて」が流れてた。♪夢見た人生〜てやつ。

このシーン重要で、奥さんを傷つけてしまったことにショックを受けたジョンが、奥さんを拒みたくなくて薬を飲まなくなってしまい、結果として統合失調症をコントロールできなくなって再発してしまう、という展開のキーポイントにもなってるんよねぇ。

この再発するシーンも衝撃的で、赤ちゃんをお風呂に入れようとしたジョンがボーッとしていて危うく溺死させそうになり、奥さんはその間に別の場所でたまたまジョンの病気が再発していると確信するに至り、赤ちゃんを救ってそのまま電話のとこに行って医者のおっさんに電話をかける。ジョンにはまたあのスパイやチャールズやその姪っ子がハッキリ見えてて、スパイが奥さんを殺そうとする幻覚が見えてそれを止めようとして、結果的に奥さんを突き飛ばしてしまい、奥さんから見ると「ジョンが自分に暴力を振るった」としか見えないわけでジョンから逃げ出そうとする。その間ずっとスパイとチャールズはジョンに「あの女は危険だ」「殺せ!」とささやき続けてる。このシーンほんとどうなるんだろうとハラハラして見ていたのだが、結果として、チャールズの姪っ子が何十年も小さな少女であることに気付いたジョンが、「この人たちは幻覚だ!」と自分で気づくことができて、車で逃げ出そうとする奥さんの車の前に飛び出し、それを止めるという展開になる。ここもすごい泣いた。奥さんの、ジョンを信じたい気持ちとジョンが恐ろしい気持ちと、もうここから逃げ出したいという気持ちとそれに罪悪感を感じる気持ちと、そういうのがないまぜになった表情が秀逸でした。

 

でそのあとは奥さんと二人三脚の日々。奥さんに頼まれた旧友のはからいで母校にポストを得たり、図書館で学生たちとコミュニケーションできるようになったり、という少しずつの進歩が描かれる。

スパイやチャールズたち「幻覚」は、最初はジョンに食ってかかったり邪魔したりするのだが、だんだん並んで歩くようになり、最後は遠目に見えるだけになっていく。「消えてはいない」というのがポイントで、ここも恐ろしい病気だなぁと思った点。こんなハッキリ見えてるんだなぁと。

ジョンもだんだん社会性が出てきて、初めて会う人は幻覚かどうか不安だから周りにいる人に「君にもこの人見える?」と聞いてみたり。このへんユーモアもあって面白かった。

クライマックスはノーベル賞受賞のシーンだと思うけど、私としてはその寸前の、「ペン」のシーンがグッと来た。

学生の時にうまく論文が書けなくて苦しんでいるジョンが「尊敬する学者のテーブルに自分の万年筆を置く」という風習をたまたま目にするというシーンがあり、それが伏線となり最後の方で、食堂に初めて入ったジョンに対し、ジョンを尊敬する若い学者たちがジョンのテーブルに次々とペンを置いていくという感動的なシーンなのである。

最初の「ペン」のシーンを見てる時から、あーコレは最後偉くなったジョンがペン置いてもらえるんだろうなー、とは思っていたものの、その後のジョンの人生が衝撃的だったので、この「ペン」の意味も大きく変わった。ジョン良かったね、生きてると良いことあるね、と思った。めっちゃ泣いた。

 

そんなこんなで最後はノーベル賞をもらって終わるけど、こちらはそこまでの思い入れは湧かなかった。まあそうでしょうね、となったのもあるし、ノーベル賞のシーンはラッセルクロウの特殊メイクが特殊すぎてそちらに目を奪われてしまったというのもあるけど。

でもスピーチの内容が感動的で、本来研究に関係ないはずの奥さんに全面的に御礼を言うという。これは実話らしい。素晴らしいね…

 

 

というわけで未見の名作を観て、とても感動したというお話でした。ラッセルクロウもイケメンだった。

イケメンだけどTシャツ脱ぐと腕がムキムキで、数学者の腕じゃねーだろ…と思ってたら、あとで調べたらジョンは学生時代は水泳部でかなり腕はたくましかったらしく、それを見て役作りしたみたいなことを言っていた。ラッセルが。ほんとかどうかわからんけどそういう裏話もあるのねぇ。

 

オススメです!