とかげのたからもの

バンドが趣味の育児中会社員です。音楽鑑賞とジョジョとレミゼラブルが好きです。

ミセス・ハリスの話

Twitterで見かけた映画の宣伝を見て興味を持った「ミセス・ハリス、パリへ行く」。

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面白そうだな〜と思いつつ映画館はハードルが高いしな〜と思っていて、原作本があるらしいので買ってみた。ちなみに買う時に間違えて2冊買ってもうた。売る。

 

ミセス・ハリス、パリへ行く/ポール・ギャリコ

ミセス・ハリス、パリへ行く ミセスハリス (角川文庫)

サクッと読めてなかなか面白かった!

主人公のミセス・ハリスがすごく気のいいおばさんなのだが、性格の明るさに相反して、階級社会のかなり下のほうで踏みつけにされてるという現実もかなりシビアに描かれていた。その現実のなかで血がにじむ想いをして貯めたお金で買うディオールのドレス…どんなに価値のあることか。ドレスの金額として「450ポンド」という数字が今の日本だとどのくらいの価値なのかよくわかんないまま読んでいたのだが、「ミセス・ハリスの年収と同じくらい」という描写があったから、ミセス・ハリスの貧しさからすると150万円くらい?もっと少ないのかな。分かんないけど、ただでさえカツカツの生活をしている人が、自分の年収くらいのお金を貯めるってものすごく大変なことよな。でも普通にしてたらそんなこと無理でも、ディオールのドレスという夢があればそれが可能になる、ということなんかもね。

そしてパリで出会う人々の群像劇としてもとても面白かった。ただ単に親切な人たちってわけじゃなく、最初は自分の家庭のことでイライラしてたり、ミセス・ハリスのみすぼらしさを見てバカにしていたり。でもミセス・ハリスの飾りのない性格とかディオールのドレスがほしいという熱い想いとかに打たれて味方になってくれるんよね。

でもそれだけじゃなくて、そもそもディオールのスタッフたちは、「ディオールを買う側」ではなく「ディオールなんて買えない側」であるミセス・ハリスと同じ市井の人たちなんよな。ミセス・ハリスよりは少しは金銭的に余裕があるかもしれないが、大きく括ったら同じ「ディオールなんて買えない側」だってことがわかってくるんよ。で、同じ庶民の、なんならもっと貧しいミセス・ハリスがわざわざ外国から、自分たちが金持ちのために作ってるドレスを買いにきてくれたってこと自体が、スタッフたちの胸を打ったんだと思う。これだけでちょっと泣けるわ。そしてミセス・ハリスのおかげで救われる人たち、寓話的ではあるけどリアリティもなくはない、日々の生活の小さな奇跡みたいなストーリーたちがほんと愛おしかったよね。

あとは、ミセス・ハリスの親友のバターフィールドさんってのがいるのだが、「赤毛のアン」でマリラの親友のリンド夫人感があってわろた。性格はちょっと違うけど、立ち位置的に全く同じ。映画では黒人の女優さんらしい。

映画観てみたいな〜。でも配信になってからかなー。

 

オススメです!