鎌倉殿の13人であの時代に興味を持って、司馬遼太郎の「義経」を読んでみた。
総じてめっちゃ面白かった。
元々なんとなく「悲劇の武将」的なイメージが強かったけど、鎌倉殿の13人で菅田将暉が演じてた源義経が、どう見てもなんらかの発達障害を抱えた、異常な才能と重大な欠落が同居する若者という感じで意外だな〜と思いつつ、実際はこんなだったのかも…という印象を持った。人間らしいというかなんというか。
で今回の司馬遼太郎の義経もかなり鎌倉殿の13人に近い義経像ではあったので、私が知らなかっただけで一般的に義経ってこういう感じ?と思うなどはした。世間知らずで高圧的かつ感情的、人の愛情に飢えていて異常に甘えん坊だけど、いざ戦場に立つと軍神かと思われるような策で勝利を得る、みたいな。ちなみに義経がヒステリックという描写があるたびに「婦人のようであった」ていう表現がいちいち入るのがじゃっかん気に食わない。
でも本当に面白く読んだなー。司馬遼太郎の本ってどれもだいたい群像劇というか、主人公の動向を追いつつ、どんどん脇道に逸れて登場人物についても深掘りしてくれるのがめっちゃ面白い。そのおかげでまた主人公の解像度が上がるというか深みが出るというか。
今回も義経についての本なのだが、母親の常盤御前をはじめ平清盛、平知盛、平宗盛、武蔵坊弁慶、源頼朝、大江広元、伊勢義盛、静御前などなど、なんかもうみんな人間らしくて立体感があるのよ…こういう人おる〜というリアリティあるのよねー。そこが好き。
平宗盛だけコテンパンに無能無能と書かれててかわいそうさはあった。鎌倉殿の13人では小泉孝太郎が演じてた人よの〜。鎌倉殿の13人でも別に有能とは描かれてはいなかったけど、適度なボンボン感とかお人好し感とか教養ある感とかがあったな。鎌倉殿の13人では腰越状(義経が頼朝に命乞いした手紙)を宗盛が書いたことになってて、腰越状じたいを知らんかったからそんなもんかの〜と思って見てたけど、司馬遼太郎を読んでから思い出すとめっちゃ面白い。絶対そんなわけないんだけど、義経にしてはものすごく文章のレベルが高いみたいな描写はあったから、誰かの入れ知恵はあったかもね…宗盛?みたいな推理を三谷幸喜がしたのかも。
なんかもっと源平ものとか鎌倉時代の本とか読んだ後でもう一回鎌倉殿の13人を見てみたくなってきた!とりあえず司馬遼太郎が書いてるのがあればそのへんは読んでみよ。
と思って調べてみたけど、司馬遼太郎の平安時代〜鎌倉時代の本は「義経」と空海を描いた「空海の風景」しかないみたい。残念〜。