とかげのたからもの

バンドが趣味の育児中会社員です。音楽鑑賞とジョジョとレミゼラブルが好きです。

マチネの終わりにの話

「ある男」で平野啓一郎好きになったので「マチネの終わりに」も読んでみた。

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なかなか面白かった!恋愛小説ってなんか鼻白むというか「こんな奴いねーよ…」とか「こんな男はいやだよ…」と思ってしまうのが常だったので縁遠かったのだが、この本は好きだった。

心理描写がほんと丹念なので、主人公たちが選んだ選択肢に共感するしかなくて、客観的に見るとけっこう突拍子もない行動も、全然唐突に思えないんよなー。本人の中では一本の線で繋がってるというのがよくわかる描写。三谷の事件にはちょっとびっくりしたけど、あれは三谷本人もびっくりしてたからねぇ…「魔が差す」という瞬間のことをよく表現できてるなって思った。

恋愛小説だけど官能的なシーンは全くなくて驚いた。それでいて5年半に及ぶ壮絶な恋愛のことを描いててすごい。5年半に子どもが2人産まれてる。子どもたちには幸せになってほしいがどうなることやら…特にケン心配。でもユキも心配だな。恋愛小説でも親目線だな?

映画版のキャストが気になってサイトを見に行ってみた。薪野が福山で洋子が石田ゆり子ね〜。薪野はなんとなく星野源的なイメージだったけど福山もいいね。石田ゆり子はまあね…中年で美人の女優つったら石田ゆり子みたいなとこがあるもんねぇ…。吉田羊でもないし永作博美でもないなー。大塚寧々ならいいかも。あと深津絵里とか中谷美紀とか!リチャードが伊勢谷友介でウケた。

 

(こっからネタバレあり)

 

でも三谷メール事件のあと、洋子の気持ちもめっちゃわかるし、その後の薪野のメールで誤解が深まったというのもあるけど、実際に会ったり電話の一本もしないで終わりにするっていうのはやっぱりよくないよな…。よくないというか別に恋愛なんてどうしたって個人の自由なんだけどね。洋子が後で後悔することになるのは目に見えてたよな。あと薪野も、状況的に仕方ないんだけど、三谷の気持ちに気づかず携帯を取りに行ってもらったりしてデリカシーがなかったよな。。三谷かわいそうよな。だからといってあのメール事件はダメだけど…でも本人がその後感じ続けた罪悪感を考えたらもう責められんよなー。

なんか、メールだけで薪野に会わずに帰っちゃった洋子がやっぱり「美しい人」すぎるよ、って悲しくなっちゃったよ。恋愛は置いといても結婚して夫婦になったらそんな美しいままではいられないしさ…。でも洋子の気持ちも分かるよな。40にもなって恋愛で取り乱すような自分でいたくないみたいなプライドがあるし当時は精神的に弱ってたし…。

今回は三谷による故意の事件だったけど、機材トラブルとか何かの事故とかで気持ちがすれ違って終わりになった恋とかもたくさんあるんだろうね世界中に…。

 

 

そんなこんなで良い本だった。恋愛小説ではこれまでで1位かもな〜。