とかげのたからもの

バンドが趣味の育児中会社員です。音楽鑑賞とジョジョとレミゼラブルが好きです。

ヘイルメアリーの話

今んとこ読んだ小説の中で人生ベストの「火星の人」の作者アンディ・ウィアーの最新作「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読了。

単行本で上下巻あり、かなり前に上巻を読み終わっていたものの、その時点でちょっと理解できてない点が多かったので一度冒頭に戻ってもう一度読み始めた。そしてそのまま下巻に突入したという流れ。

 

結論から言うとものすごく良かった!!火星の人を超えるかというとそれは超えない。でもちょっと違う領域に進出していて本当に面白かった。

 

【警告】これより先は(ネタバレを含むので未読の人は)読んではいけない

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何が一番熱いって、ロッキーとの出会いと絆の深まり!!!!いま描いたロッキーの想像図。

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アンディウィアーの本、火星の人もそうだったけど、SFの地盤にユーモアという確固とした層があるのが特徴。今回もロッキーとライランドの会話がもう面白くってしょうがない。ロッキーの高い知性と天然ボケ(本人はいたって真面目)がほんとに好き!「よい、よい、よい!!」みたいに興奮しちゃうのもかわいいし、凹むとライランドが聞き取れないくらい音域下がっちゃうのもかわいい。

ライランドが死にかけている時にロッキーが助けに来てあやうく死にかけたり、その死にかけたロッキーをライランドが助けようとして策を練り、結果的にとどめをさすところだったみたいなやつもおもしろかったし、逆にロッキーの致命的なピンチにライランドが自分の生還の可能性を捨てて助けに戻るとか、ほんとに胸熱。

ライランドが生来、人のために命を捨てるのが当たり前みたいな聖人タイプではない、というところがポイントなんよな。だんだん取り戻していく記憶の中で、自分が人類を救うために自ら志願してヘイルメアリーに乗ったわけではなく、クルーの事故死により代理で推薦され、心底嫌がって抵抗したけど無理やり乗せられてしまった人間だったと気づくところ、ライランドも苦しんでいたけど読者であるこちらもしんどかった。ライランドがすげーいい奴だってことはこれまでの流れで十分に分かってて、だとすると片道切符の特攻ミッションにも悩んだ末に志願したのかもな、と思っていたけどそうではなかった、というのが少しのガッカリと、でも普通はそりゃそうだよな、というさらなる親近感が同時に湧いてくるんよね。面白いのー。

この流れのなかでストラットがライランドに言うセリフが辛辣なんよなー。お前はいい奴だが臆病だ、臆病だからこそ論文をめぐるトラブルにヘソを曲げ、嘱望されていた科学者としての将来を捨て、『クールな先生』でいられる中学教師という職に逃げ込んだ、失恋するのが怖いから恋愛もしない、みたいなやつ。ほっといてくれ!と思いつつ、核心をつかれてしまってるんだろうな〜、という同情みたいな。

そういうライランドが、最後には命をかけてロッキーを助けに戻る、というのが完全にしびれる。そして戻ると決意して戻ってる最中にライランドが、自分は今まで深い人間関係を築くのを避けてきたということを認めるんよな。ロッキーが初めて深い絆をもった友達だということに気づいたんよな。熱い…。

 

そんで一番最後…ロッキーの星に永住せざるを得なくなったライランドがそれなりに人生を楽しんでいて、ロッキーの種族の中学生にあたる子どもたちの教師をやっているという結末…ほんとに感動しちゃって泣いちゃった。科学者の道を捨てて「逃げ」でやっていたとストラットに言われた中学教師という職は、それでもやっぱりライランドにとって天職だったんだなー、っていう。ほんとにもーー胸熱だよ。

あとこの段階になるとロッキーとライランドは普通に喋れるようになって、ロッキーの「きみはぼくを助ける、質問?」みたいな喋り方じゃなくなってるんよな。それがちょっとだけさみしく思えてしまった。ライランドとロッキーは寿命が全然違うから、ライランドはロッキーよりも早く死ぬことになるだろうけども、ライランドが死んだ時のロッキーの悲しみを想像するとそれだけでこっちまで悲しくなるわ。

 

そんな感じだったかな…とにかくロッキーに注目した感想になっちゃったけど、それ以外もめっちゃ面白い。まっくろくろすけみたいなアストロファージをどう駆逐するんだ一体?!みたいな謎もそうだし、そのプロジェクトに参加してくるクセ強めの人たちも面白い(ちょっとキャラっぽさがぬぐえんけど)し、ヘイルメアリーの中のお世話ロボットとの攻防とかもふつうにわろたし。下巻を読み終わる前に上巻を読み直しておいてよかったなーと思った。

映画化が決定してるらしいけど早く観たいー!上映されたら観にいくー!